名前の由来

子供の頃よくお土産として食べていた、

返馬餅の名前の由来についてのお話です。

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地元では、次のような昔話も残っています。
昔々、この付近の村で疱瘡(ほうそう)が流行し人々は大変苦しんだそうです。奥乃という娘の家も、家族のほとんどが疱瘡にかかったが、奥乃だけは元気でした。奥乃は器量もよく優しく、病に付した家族の面倒も良く見ました。医療という医療、薬という薬がない時代、奥乃は、参宮に向かう人が馬をつなぎ、馬を帰す「返馬所」に建てられた鳥居前から伊勢神宮を拝み、家族の回復を祈っていました。 

 

ある日のこと、病気で疲れた父親が「顔のあばたを見て手当てをしたい。鏡を探してきてくれ」と頼まれたのですが、この時代、鏡などはよほど裕福な家しかなく娘は困ってしまいました。鏡を手に入れるすべもなく、何とか父親に顔の様子を見せてやりたいと思案にくれた奥乃は、ある日、米櫃の中の米を見て、父親の気を紛らわすために好物の「おたふく餅」を作ることを思いつきました。

 

へんば餅の焦げ目餅をつき、おたふく餅ができあがり、おたふく餅に網で焦げ目をつけて焼いていると、餅の焦げ目が父親のあばた顔そっくりになりました。奥乃は、早速床にいる父親のところに持っていき「これはお父さんの顔にそっくりじゃ」と言って渡すと、父親は喜んで「私の顔はこのようになっておるのか」と、餅を表にしたり裏にしたり見ているうちに、父親の顔色はしだいに良くなり、あばたも綺麗におちてしまいました。奥乃はすぐに、兄姉にも食べさせると、見る見るうちに疱瘡が治っていきました。 

 

それでこの村の人々は、この餅菓子を売り出すことにしました。村人たちが餅の名前を「鏡餅」にしようか「焼餅」にしようか錯誤していると、近所の老婆が「奥乃がいつも返馬所のところで伊勢神宮を拝んだおかげで病が治ったのだから、『返馬餅』じゃ」と言った。こうして「へんば餅」と名付けられ、返馬所で売り出されるようになったそうです。 そして返馬所一帯から疱瘡は消えうせたと語り継がれています。 

参考文献「小俣町史 通史編」